「毎月、髪質改善に通っているのに、全然髪がよくならないんです」
美容室で、こんな相談を受けることがあります。
髪をきれいにするために、時間もお金もかけている。それなのに、毛先はパサパサ。枝毛も増えている。
これって、ちょっと不思議ですよね。
そもそも「髪質改善」という名前なのに、どうして髪がきれいにならないのでしょうか?
私は美容師を30年間続けていますが、実は「髪質改善」という言葉には、以前から少し疑問を感じています。
というのも、美容室によって「何を改善するのか」がまったく違うからです。
今回は、私が考える本当の髪質改善についてお話しします。
そもそも髪質改善って何を改善するの?
髪質改善という言葉を聞くと、どんな髪を想像しますか?
サラサラでツヤがある髪。
しっとりまとまる髪。
ハリやコシがあって、健康そうな髪。
そんな理想の髪を思い浮かべる方も多いと思います。
でも、実は「髪質改善」という言葉に、すべての美容室で共通する施術内容があるわけではありません。
例えば、くせ毛をまっすぐにする縮毛矯正。
これも、くせを改善するという意味では髪質改善です。
トリートメントで髪の手触りをよくすることも、手触りを改善する髪質改善と考える美容師さんがいます。
どちらも、お客様の悩みを解決するための大切な技術です。
ただ、ここで考えてほしいんです。
手触りがよくなることと、髪そのもののダメージが減ることは同じでしょうか?
私は、そこを分けて考える必要があると思っています。
縮毛矯正でサラサラになっても、髪が傷んでいないわけではない
例えば縮毛矯正。
くせやうねりがなくなると、髪はサラサラでツヤツヤに見えます。
朝のスタイリングも楽になって、湿気で広がる悩みも軽減される。
これは、お客様にとって大きなメリットです。
私も縮毛矯正は素晴らしい技術だと思っています。
でも、縮毛矯正は薬剤や熱を使って髪の構造に働きかける施術です。
どれだけきれいに仕上がっても、髪への負担がゼロになるわけではありません。
施術直後はとてもきれいでも、時間が経つとパサつきや手触りの変化が気になってくる場合があります。
もちろん、すべての縮毛矯正でそうなるわけではありません。髪の状態や薬剤の選び方、施術方法によって違います。
大切なのは、見た目がきれいになったからといって、髪の内部まで健康な状態に戻ったわけではないということ。
以前、大人女性の縮毛矯正は、髪をまっすぐにするだけでは老けて見えることも!? という記事でも、縮毛矯正はくせを伸ばすだけでなく、仕上がり全体を考えることが大切だとお話ししました。
縮毛矯正をすること自体が悪いのではありません。
何を改善したくて、そのためにどのくらい髪に負担をかけるのか。
そこを理解して選ぶことが大切なんです。
毎月トリートメントしているのに、毛先がパサパサになる理由
トリートメントによる髪質改善も同じです。
トリートメントをすると、髪の表面がなめらかになり、手触りやまとまりがよくなります。
でも、その効果が薄れてくると、もともとのダメージが再び目立つことがあります。
これは、トリートメントが髪を傷めたという意味ではありません。
トリートメントで補っていた手触りやまとまりが変化し、傷んだ髪の状態が分かりやすくなった可能性もあるんです。
私のお店にも、毎月髪質改善トリートメントをしているのに、髪がよくならないと相談に来られる方がいます。
そういうお客様の髪を見ると、毛先がパサパサしていたり、枝毛がたくさんあったりすることもあります。
私はそんなとき、なぜその状態になっているのかを考えます。
トリートメントが足りないのでしょうか?
それとも、カラーや縮毛矯正、日頃のヘアケアなどによるダメージが積み重なっているのでしょうか?
髪のダメージが進んでいるのに、手触りをよくすることだけを繰り返しても、根本的な解決にはつながらない場合があります。
以前書いた 美容師がトリートメントをすすめる理由。私がすすめなくなった理由 でもお話ししていますが、私は今、トリートメントを追加することより、必要なケアを施術の中で考えるようにしています。
私が考える髪質改善は、これから伸びる髪を傷ませないこと
では、私が考える髪質改善とは何でしょうか。
それは、自分が持っている髪の状態を、できるだけ損なわずに伸ばしていくことです。
髪は頭皮の中で作られ、生えてきた部分はすでに死んだ細胞でできています。
一度傷んだ髪は、トリートメントをしたからといって、新しく生えてきたときの状態に完全に戻るわけではありません。
だからこそ、私はこれから伸びていく髪を大切にしたいんです。
例えば、カラーやパーマをするときも、必要以上に髪へ負担をかけない薬剤選びや施術を考える。
すでに傷んでいる毛先には、さらにダメージが重ならないようにする。
そうやって、少しずつ傷みの少ない髪を伸ばしていく。
私は、それが長い目で見た髪質改善だと思っています。
実は私自身、今は髪を染めていません。
普段のお手入れも、基本的には乾かして寝るだけ。
もちろん、紫外線や摩擦などによる日常的なダメージまでゼロになるわけではありません。
でも、カラーやパーマによる負担がない分、自分の髪が持っている状態を比較的保ちやすいと感じています。
何か特別なことを繰り返すより、傷ませないことを考える。
これが、私の髪質改善の基本です。
カラーやパーマの後こそ、髪への負担を考えたい
私が美容室で大切にしていることの一つに、カラーやパーマの後処理があります。
カラーやパーマ、縮毛矯正は薬剤を使う施術です。
施術後の髪には、使った薬剤や髪の状態に応じて、適切な洗浄や後処理が必要になります。
私は、残留する可能性のある薬剤成分やアルカリなどに配慮し、施術後の髪への負担をできるだけ抑えることを意識しています。
ただし、すべての薬剤が髪の中に残って傷み続けるわけではありませんし、特定の後処理をすればダメージを完全に防げるというものでもありません。
大切なのは、使用した薬剤の特徴を理解し、必要な処理を適切に行うことだと思います。
美容室で仕上がった瞬間だけでなく、帰宅してから、数週間後、数か月後の髪の状態まで考えたい。
そのために私は、施術そのものの負担を減らすことと、施術後のケアの両方を大切にしています。
髪質改善をお願いする前に、美容師さんに聞いてほしいこと
ここまで読んで、髪質改善をやめた方がいいのかな? と思った方もいるかもしれません。
でも、私はそうは思いません。
くせ毛が気になって毎朝アイロンをしている方なら、縮毛矯正で扱いやすくすることが大きな助けになる場合があります。
毛先の手触りが悪く、髪が絡まりやすい方なら、トリートメントが役立つこともあります。
問題は、髪質改善という名前だけで施術を選んでしまうこと。
例えば、美容師さんにこんなことを聞いてみてください。
「この髪質改善は、何を改善する施術ですか?」
「手触りをよくするものですか? くせを伸ばすものですか?」
「髪への負担はありますか?」
「繰り返すことで、髪はどう変わりますか?」
難しい薬剤の名前まで覚える必要はありません。
自分が求めていることと、美容師さんが提供する施術が合っているかを確認するだけでも違います。
髪質改善という言葉は同じでも、目的が違えば施術も違います。
そこを知らずに続けてしまうと、毎月通っているのに思っていた髪にならない、ということが起こるんです。
最後に|本当の髪質改善は、一瞬では終わらない
私は、髪質改善を否定したいわけではありません。
縮毛矯正もトリートメントも、必要な方には大切な技術です。
ただ、施術直後のサラサラな髪だけを見て「髪質が改善した」と考えるのは、少し違うと思っています。
今の髪をきれいに見せること。
くせを伸ばして扱いやすくすること。
そして、これから伸びる髪のダメージをできるだけ抑えること。
どれも髪質改善と呼ばれることがありますが、目的は同じではありません。
私が目指しているのは、今ある髪を必要以上に傷ませず、時間をかけてきれいな髪を育てていくこと。
髪質改善で大切なのは、何回施術したかではなく、何をどう改善するのか。
せっかく時間もお金もかけるのなら、担当する美容師さんと、目指す髪の状態をしっかり話してみてください。
それが、本当に自分に合った髪質改善への第一歩だと思います。

