美容室でシャンプーやトリートメントをすすめられて、断りづらかった経験はありませんか?
「これ、すごくいいですよ!」
「今の髪には、この商品がおすすめです!」
そう言われると、買わないと悪い気がしたり、断ったら気まずくなるんじゃないかと思ったり。
実際、そういうお客様は少なくないと思います。
でも、最初にお伝えしておきます。
美容室ですすめられた商品は、無理に買わなくていいんです。
私は美容師を30年間続けていますが、昔は会社から商品販売の目標を与えられ、毎月お客様に商品をおすすめしていました。
ところが、私は昔から営業が苦手。
それなのに今は、これまでの美容師人生の中で一番商品が売れています。
なぜ、売ることを頑張らなくなったのに、商品が売れるようになったのでしょうか?
今回は、販売する側だった私の経験から、美容室の商品販売についてお話しします。
昔の私は、商品をすすめることが仕事になっていました
以前勤めていた美容室では、カットやカラーなどの技術売上だけでなく、シャンプーやトリートメントなどの商品販売にも目標がありました。
「今月の店販目標はこれくらい」
「すべてのお客様に声をかけましょう」
そんな指示が出るわけです。
私は昔から、人に何かを売り込むことが苦手でした。
でも、会社の方針なので、おすすめしないわけにはいきません。
ほかのスタッフも見ていますから、「あの人、ちゃんとお客様に声をかけていない」と思われるのも困ります。
だから、きちんとお声がけをしていました。
「こちらのシャンプーはいかがですか?」
「新しいトリートメントが出たんですよ」
そして、お客様に断られたら、それで終わり。
心の中では、
「はい、ちゃんとおすすめしました!」
という感じです(笑)。
もちろん、商品を気に入って購入してくださる方もいました。
でも、いつの間にか、お客様に合う商品を考えることより、声をかけること自体が目的になっていたんです。
これでは、本来一番大切なはずのお客様が置き去りになってしまいますよね。
美容師も、本当は商品販売が苦手だったりする
これは私の経験から感じていることですが、美容師さんの中には、商品をおすすめすることが苦手な人もいます。
美容師になったのは、髪を切ったり、染めたり、お客様をきれいにしたいと思ったから。
営業が得意だから美容師になった、という人ばかりではありません。
それでも、お店から販売目標が与えられれば、商品をおすすめすることになります。
もちろん、お客様の髪を考えて、本当に必要なものを提案している美容師さんもたくさんいます。
ただ、商品をすすめられたからといって、必ずしもその美容師さんが普段から使っていて、効果や使い心地をよく知っているとは限りません。
私は、ここも大切なポイントだと思っています。
「美容師さん自身も使っていますか?」
「どんなところが気に入っていますか?」
そんなふうに聞いてみてもいいんです。
使っていない商品でも、成分や使用目的を理解して適切に提案できる美容師さんはいます。
でも、実際に使っている人なら、使いやすさだけでなく、気になる点まで具体的に話せることがあります。
私は、商品のいいところばかりではなく、デメリットもきちんと伝えたいと思っています。
カラー2,500円。でも、必要なケアは追加料金だった
以前働いていた美容室は、低料金を売りにしているサロンでした。
カラー料金は2,500円。
でも、それですべてが終わるわけではありません。
前処理が1,000円、後処理が1,000円。さらにトリートメントが2,500〜5,000円。
お客様に説明しながら、オプションを追加していく仕組みでした。
営業が苦手だった私は、なかなか追加メニューをおすすめできませんでした。
結局、カラー2,500円だけで終わることも多く、売上はよくありませんでした。
でも、美容師として、ずっと矛盾を感じていたんです。
髪をきれいに仕上げるために必要だと思うものがあっても、お客様が選ばなければ使えない。
美容師は技術職なのに、使えるものが制限されてしまう。
それでは、仕上がりまで制限されてしまうのではないかと。
もちろん、料金を抑えて必要なものだけ選べる仕組みにもメリットはあります。
ただ、私は自分が一番いいと思う施術を、お客様に提供したかったんです。
「トリートメントを選んでくれなかったから」
「処理剤を追加しなかったから」
そんなふうに、仕上がりの理由をお客様の選択のせいにしたくなかった。
だから独立したとき、私は美容室の考え方を変えました。
お客様に施術の一つひとつを選んでもらうのではなく、私が髪の状態を見て、必要な施術を考える。
必要なケアを最初から施術に組み込むスタイルにしたんです。
この考え方については、美容師がトリートメントをすすめる理由。私がすすめなくなった理由 でも詳しくお話ししています。
売り込まなくなったら、逆に商品が売れるようになった
独立してから、私の商品販売に対する考え方も変わりました。
今は、お客様から相談されたときに、おすすめの商品をお伝えすることがほとんどです。
「今使っているシャンプーが合わないんです」
「いろいろ試したけれど、もう何を使っていいか分からなくて」
「何かおすすめはありますか?」
そんな相談を受けたら、私自身が使ってよかった商品や、お客様の悩みに合いそうなものをご紹介します。
ありがたいことに、私はお客様から髪を褒めていただくことがあります。
「髪がきれいですね!」
「何のシャンプーを使っているんですか?」
そんなふうに聞かれることも多いんです。
私が今使っているシャンプーやトリートメント、化粧品は、10年以上使い続けているものです。
長く使っているからこそ、いいところも、ちょっと気になるところも分かっています。
もちろん、自分に合っているものが、ほかの人にも必ず合うとは限りません。
だから私は、最初から大きなお得用サイズをおすすめすることはあまりありません。
まずは小さいサイズから試してみて、気に入ったら大きいサイズにする。
その方がいいと思うんです。
だって、大きいサイズを買って合わなかったら、お客様も残念ですし、おすすめした私もちょっと悲しいですからね。
そして不思議なことに、こうした販売スタイルになってから、今が一番商品を販売しています。
無理に売ろうとしていた頃より、自然に売れるようになったんです。
信頼関係ができると、商品も普通の会話になる
美容室で長くお客様を担当していると、髪のことだけでなく、いろいろなお話をするようになります。
「最近おいしいカフェを見つけたんです」
「あのお店、行ったことあります?」
「これを使ってみたら、すごくよかったですよ」
そんな日常会話です。
お友達同士でも、よかったものや、ちょっと失敗したものについて話しますよね。
私は、美容室の商品もそれと同じでいいと思っています。
信頼関係があれば、お客様から自然に「おすすめある?」と聞いてくださる。
そのときに、自分が本当にいいと思うものを紹介する。
商品を売るための会話ではなく、普段の会話の延長なんです。
面白いことに、私の美容室でも商品をよく使っているスタッフと、あまり使っていないスタッフでは、販売状況に違いがあります。
私の見てきた範囲では、普段から商品を使い、そのよさを自分の言葉で話せるスタッフの方が、販売につながりやすいと感じています。
もちろん、販売実績には担当するお客様の数や接客スタイルなども関係するので、使っているかどうかだけで決まるわけではありません。
ただ、私は自分自身の経験から、実際に使って納得している商品は、自然に話せるものだと思っています。
以前、ドライヤーを何台も試して、自分で納得できた商品を紹介した経験もあります。
ドライヤーを試しまくって美容師がパナソニック「イオニティ」にたどり着いた理由 でも、そんな商品選びについて書いています。
美容室で商品をすすめられたら、どうすればいい?
では、美容室で商品をすすめられたとき、どうすればいいのでしょうか?
私は、まず自分に必要かどうかを考えてほしいと思います。
気になる商品なら、遠慮せずに質問してみてください。
「今使っているものと、何が違いますか?」
「私の髪には、どんなところが合いそうですか?」
「小さいサイズはありますか?」
こうした質問にきちんと答えてもらえれば、購入を判断する材料になります。
そして、必要ないと思ったら断ってもいいんです。
「今使っているものがあるので、今回は大丈夫です」
「少し考えてみますね」
これだけで十分。
私は、お客様が商品を購入しなかったからといって、気まずくなるような美容室であってほしくありません。
商品を買うことと、美容師を信頼することは別の話です。
本当に必要な商品なら、お客様自身が納得して選べることが一番だと思っています。
最後に|美容室の商品は、信頼してから買っても遅くない
昔の私は、会社から言われた販売目標を達成するために、苦手な営業を頑張っていました。
でも今は、商品を売ることより、お客様に合った技術や施術を提供することを大切にしています。
その結果、商品をおすすめしてほしいと、お客様から聞いていただけるようになりました。
そして、昔よりも商品が売れるようになったんです。
美容室の商品が悪いわけでも、商品をおすすめする美容師さんが悪いわけでもありません。
ただ、必要かどうかはお客様が決めていいんです。
「売りたいからすすめる」ではなく、「相談されたから、自分が納得したものを紹介する」。
私は、そんな関係が好きです。
美容室は、商品を買わないといけない場所ではありません。
安心して髪を任せられて、困ったときに何でも相談できる場所であってほしい。
30年間、美容師を続けてきて、今はそう思っています。

