美容師にとって「お任せします」という言葉は、嬉しい言葉でもあります。
自分の技術やセンスを信頼していただけているように感じるからです。
でも、正直に言うと、ちょっと困ることもあるんですよね。
特に初めてのお客様から、何の希望もなく「全部お任せします」と言われた場合。
その方がどんな髪型を好きなのか、どのくらい切ってもいいのか、何を変えたいのか。
何も分からない状態では、美容師も判断に迷ってしまいます。
私は美容師として30年間、たくさんのお客様を担当してきましたが、お任せだからこそ、少しだけ情報をいただけると嬉しいと思っています。
今回は、美容室で「お任せします」と言われたとき、私が何を考えているのかをお話しします。
「全部お任せします」と言われて困った話

以前、男性のお客様を担当したときのことです。
「お任せします」と言われたので、私はどのくらい切りたいのかを確認しました。
すると、
「長さも髪型も全部お任せします。お好きにどうぞ」
とのこと。
似合う髪型にしてほしいのか、流行りの髪型にしたいのか、今の雰囲気を変えたいのか。
少しでもヒントが欲しかったのですが、本当にすべてお任せだったんです。
さて、どうしましょう(笑)。
例えば、思い切って短く切ったとしても、その方が短い髪を好きとは限りません。
かといって、今までと同じ髪型がいいのかも分かりません。
結局、私は無難に伸びた分くらいをカットしました。
仕上がりを見たお客様は、
「なるほど」
と言って帰っていかれました。
今でも、あの「なるほど」は何だったんだろうと思います(笑)。
もちろん、もっと違う聞き方ができたかもしれません。
でも、この経験からも、私はお任せと言われたときほど、お客様の好みを知ることが大切だと感じています。
美容師は顔型だけで似合う髪型を決めているわけではない
お任せでカットするとき、私が最初に知りたいのは、お客様の好きな雰囲気です。
普段どんな髪型が好きなのか、どんな仕上がりを希望しているのか。
会話をしながら、お顔の雰囲気やお洋服なども見ています。
もちろん、顔のパーツや骨格も確認します。
でも、私の場合は、カットする前にすべてを決めているわけではありません。
実際に切りながら、長さやレイヤーの位置を調整することも多いんです。
例えば、
「もう少し短い方が似合うかな?」
「ここを少し軽くした方がバランスがいいな」
そんなことを考えながらカットしています。
特に私がよく見るのは、頬の位置です。
頬の高さや膨らみ、位置は人によって違います。
顔周りの髪がどの位置にくるかによって、全体の印象も変わるんですよね。
そして、仕上げる前にはもう一度バランスを確認します。
前髪の長さ、レイヤーの高さ、トップのボリューム。
必要があれば、そこで最終調整をします。
私にとって「似合わせ」は、最初に決めた設計図どおりに切ることだけではありません。
実際の仕上がりを見ながら、その方に合うバランスを探していくことも大切なんです。
似合うと思っても、いきなり短く切ることはありません
例えば、ロングヘアのお客様。
私はショートヘアも似合いそうだなと思ったとしても、お任せだからといって、いきなりショートにはしません。
なぜなら、髪型が変わると毎日のお手入れも変わるからです。
今までロングヘアだった方がショートにすると、乾かし方やスタイリングの方法も違ってきます。
美容室できれいに仕上がっても、自宅でうまく再現できなかったら困りますよね。
もちろん、ご本人が短くしたいと希望されるのであれば別です。
今までとお手入れの方法が変わることを説明したうえで、ショートにすることもあります。
でも、それってもう「全部お任せ」ではなく、「ショートにしたい」という希望があるわけです(笑)。
私は、お任せの場合でも、長さについては確認するようにしています。
もしショートが似合いそうなら、
「少しずつ短くしていくのもいいと思いますよ」
と提案することもあります。
似合う髪型だからといって、今すぐその髪型にすることが正解とは限らないんです。
「分からないからお任せ」と言うお客様もいる
美容師がお客様に希望を聞くのは大切なことです。
ただ、質問の仕方にも気をつけなければいけないと思っています。
例えば、
「レイヤーは入れますか?」
「量はすきたいですか?」
「前髪は何センチにしますか?」
こんなふうに聞かれても、よく分からない方もいらっしゃいますよね。
実際に、
「分からないからお任せしてるのよ〜」
と言われることもあります。
そりゃそうですよね(笑)。
お客様は、美容師と同じようにカットの技術やデザインを理解しているわけではありません。
だから私は、専門的なことを細かく質問するよりも、今の髪型で何が気になっているのかを聞くようにしています。
例えば、
「最近、髪が鬱陶しくなってきましたか?」
「何か気分を変えたい感じですか?」
「今の髪型で扱いにくいところはありますか?」
そんな質問の方が、お客様も答えやすい場合があります。
また、好みがうまく言葉にできない方には、ヘアカタログを見てもらうこともあります。
そのときは、好きなスタイルを3つくらい選んでいただくんです。
その3つを見比べると、何となく共通する雰囲気が分かることがあります。
長さが違っていても、柔らかい雰囲気が好きなのか、すっきりした髪型が好きなのか。
そこから好みを読み取っていきます。
お客様が希望をうまく説明できないなら、美容師が引き出していくことも仕事だと思っています。
常連のお客様と初めてのお客様では「お任せ」の意味も違う
私の場合、常連のお客様から「お任せします」と言われる方が、安心して提案できることが多いです。
長く担当していると、その方の好みや髪質、普段のお手入れの仕方も分かってくるからです。
でも、だからといって毎回いつもどおりにするわけではありません。
前回の髪型を踏まえて少し変えてみたり、季節に合わせて長さを調整したりすることもあります。
そして、仕上がったときには、なぜその髪型にしたのかを説明するようにしています。
「前回はこうだったので、今回は少しここを変えてみました」
そんなふうにお伝えするんです。
初めてのお客様の場合は、もう少し時間をかけて、会話の中から好みを探っていきます。
最初は細かい希望が分からなくても、カウンセリングが進んでから、
「そのあたりはお任せします」
と言っていただけることもあります。
そして仕上がったら、常連のお客様と同じように、なぜそのスタイルを選んだのかをお伝えします。
私は、お任せでカットしたからこそ、仕上がりについてきちんと説明することが大切だと思っています。

美容室で「お任せ」するとき、何を伝えればいい?
美容室でお任せしたいときは、難しく考えなくても大丈夫です。
最低限、こんなことを伝えていただけると、美容師は提案しやすくなります。
- 長さを大きく変えてもいいのか、今くらいを保ちたいのか
- かわいい雰囲気、かっこいい雰囲気など、好きなイメージ
- 今の髪型で困っていること
- 毎朝どのくらいスタイリングに時間をかけられるか
もちろん、全部答える必要はありません。
「この写真の雰囲気が好き」
それだけでもいいんです。
写真とまったく同じ髪型にしたいわけではなくても、好きな雰囲気を知るためのヒントになります。
お客様がうまく説明できなくても、その気持ちをくみ取ってくれる美容師はいます。
だから、遠慮せずに何となくの希望を伝えてみてください。
最後に|お任せは嬉しい。でも少しだけヒントをください
私は「お任せします」と言われること自体は嬉しいです。
美容師として信頼していただけているように感じますからね。
でも、何の情報もないまま自由にカットすることが、お客様にとって一番いいとは限りません。
美容師が思う似合う髪型と、お客様が好きな髪型が、必ずしも同じとは限らないからです。
せっかく美容室に来ていただいたのなら、仕上がったときに喜んでいただきたい。
だからこそ、私は少しでもお客様の好みや気持ちを知りたいと思っています。
「お任せします。でも、こんな雰囲気が好きです」
それだけでも十分です。
あとは美容師と相談しながら、似合う髪型を一緒に見つけていけばいいと思っています。

