「ノンシリコンシャンプーは髪にいい!」
一時期、そんな言葉をよく耳にしませんでしたか?
シリコンは髪に悪い、毛穴に詰まる、だからノンシリコンがいい。
そんなイメージが広がった頃、私は正直、不思議に思っていました。
「そんなに悪いものなら、なんで最初から使っていたの?」
美容師として30年間、いろいろなヘアケア商品を見てきましたが、流行が変わるたびに、昨日まで良いと言われていたものが突然悪者になることがあります。
でも、本当に大切なのは流行ではなく、その成分がどんな働きをするのかを理解すること。
今回は、シリコンの役割と、実際にサロンで経験したお客様の髪の変化についてお話しします。
そもそもシリコンは髪に何をしているの?
ヘアケアで使われるシリコン(正確にはシリコーン)は、主に髪の表面をなめらかに整えるための成分です。
私は昔から、シリコンは「髪の面を整えるもの」と認識しています。
髪の表面を薄く覆い、摩擦を減らして、指通りやツヤ、まとまりをよくする働きがあります。
例えば、髪が傷んでキューティクルが乱れると、手触りが悪くなったり、髪同士が絡まりやすくなったりします。
そんなとき、シリコンは髪の表面を整える手助けをしてくれるんです。
ただし、シリコンが髪の内部のダメージを元どおりに修復しているわけではありません。
髪を扱いやすくすることと、傷んだ髪が元の健康な状態に戻ることは別の話なんですね。
だから私は、シリコンそのものが悪いとは考えていません。
問題になるのは、髪質に合わない仕上がりや、必要以上にヘアケア剤を重ねてしまうことだと思っています。
ノンシリコンなのに髪がベタベタ?お客様に起きたこと
以前、あるお客様からこんな相談を受けました。
「最近、髪が乾きにくくなったんです」
「なんだかベタベタするし、変なまとまり方をするんですよね」
実際に髪を触ってみると、自然なサラサラ感とは違う、重たい手触りがありました。
そこで普段使っているシャンプーを聞いてみると、ノンシリコンシャンプーを使っているとのこと。
私は一度、普段のヘアケアを見直してもらうことにしました。
すると、その後は乾きにくさやベタつき、独特なまとまり方が気にならなくなったそうです。
ところが、今度は髪のパサつきや傷みが目立つ状態になっていました。
結局、傷んだ部分をカットして、きれいな髪を伸ばしていくことになったんです。
ここで誤解してほしくないのは、ノンシリコンシャンプーが直接髪を傷めたと決まったわけではないということ。
使用していたトリートメントやスタイリング剤、もともとの髪のダメージなど、いろいろな要因が考えられます。
また、表面を整える成分によって、傷みが目立ちにくくなっていた可能性もあります。
髪は皮膚のように生きた組織が傷を治すわけではないので、一度生じた大きなダメージを完全に元どおりにすることはできません。
だからこそ、傷みが進んでから何とかするより、日頃から必要以上の負担をかけないことが大事なんです。

ノンシリコンシャンプーでもトリートメントにはシリコンが入っている?
ここは意外と知られていないかもしれません。
実は、ノンシリコンシャンプーと書かれていても、セットのトリートメントにはシリコンが配合されている場合があります。
シャンプーは洗浄を中心に考え、トリートメントには手触りやまとまりを整える成分を配合する。
そんな商品設計は珍しくありません。
もちろん、シャンプーにもシリコンが入っている製品はありますし、トリートメントまでノンシリコンの製品もあります。
つまり、シャンプーに「ノンシリコン」と書いてあるだけでは、ヘアケア全体の仕上がりまでは分からないということ。
それなのに「ノンシリコンだから髪にいい」と判断してしまうのは、ちょっと違うと思うんです。
大切なのはシリコンが入っているかどうかだけでなく、自分の髪に合う仕上がりになるかどうかではないでしょうか。
私は約10年間、シリコン入りのヘアケアを使っています
ちなみに、私自身が約10年間使い続けているシャンプーとトリートメントには、シリコンが配合されています。
使い続けている理由は、とてもシンプル。
私の髪には、重すぎず、ちょうどいい仕上がりになるからです。
ただし、このトリートメントもたくさん使えば髪が重たくなります。
だから、必要な量を必要なところに使うようにしています。
私が特に意識しているのは、毛先からなじませること。
傷みが気になる毛先を中心に使い、髪の表面や根元付近にはつけすぎないようにしています。
そして、定期的にサロンで、髪に残った汚れやヘアケア剤の付着を落とすためのスパも受けています。
私にとっては、必要なものは使い、余分なものを重ねすぎないための習慣です。
ただ、すべての人が定期的に特別なクレンジングをする必要があるわけではありません。通常のシャンプーで十分な場合もあります。
以前の私は、髪にいいと言われるものを何種類も使っていました。
その頃の失敗談は、美容師なのにヘアケアはズボラ!私が髪にいろいろつけない理由 でもお話ししています。
ノンシリコンかどうかより、自分の髪に合うかどうか
ノンシリコンシャンプーが合う方も、もちろんいます。
軽い仕上がりが好きな方もいれば、しっとりとまとまる仕上がりが好きな方もいるでしょう。
髪が細い方と太い方、カラーや縮毛矯正をしている方では、必要なヘアケアも違います。
私がお伝えしたいのは、シリコンを避けましょうということでも、積極的に使いましょうということでもありません。
「髪にいいと言われているから」という理由だけで選ばないでほしいんです。
ヘアケアは、たくさん使えばいいわけでも、高価ならいいわけでもありません。
以前書いた トリートメントを頑張った結果、髪がボロボロに!? という記事でも、ヘアケアを頑張りすぎたお客様の経験を紹介しています。
30年間、美容師を続けてきて思うのは、髪をきれいに保つためには、何を足すかだけでなく、何を使いすぎているかを考えることも大切だということ。
ノンシリコンだから髪にいいわけではない。シリコン入りだから髪に悪いわけでもない。
自分の髪に必要なものを、必要な量だけ。
私は、そんなシンプルなヘアケアが好きです。

