「髪がパサつくから、毎日ヘアオイルをつけています」
美容室でお客様とお話ししていると、こんな言葉をよく聞きます。
ヘアオイルは髪に潤いを与えるもの。毎日つけていれば、だんだん髪がきれいになっていく。
そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
でも、私は美容師を30年続けてきて、ヘアオイルをどちらかというとスタイリング剤として考えています。
実は、私自身ももう何十年もヘアオイルを使っていません。
それでも、髪には自然なツヤやまとまりがあります。
今回は、なぜ私がヘアオイルを毎日の必需品だと考えていないのか、美容室でのお客様とのやり取りも交えてお話しします。
ヘアオイルは髪をきれいにするもの?きれいに見せるもの?
ヘアオイルの役割として、まず思い浮かぶのはツヤやまとまりではないでしょうか。
毛先のパサつきを目立ちにくくする。広がりを抑える。毛束をつくって、今っぽい濡れたような質感に仕上げる。
私はこうした使い方を、スタイリングの一つだと考えています。
例えば、毛先がパサパサして見えるとき、少量のオイルをなじませると、髪にツヤが出て落ち着いて見えることがあります。
でも、その毛先が元の健康な状態に戻ったわけではありません。
ここが、私が一番伝えたいところなんです。
髪がきれいに見えることと、髪そのもののダメージが治ることは違う。
髪はすでに死んだ細胞でできているので、皮膚の傷のように自分で再生することはありません。
枝毛にオイルをつけても、枝毛が元どおりにつながるわけではないんですね。
だから、私はヘアオイルを「傷んだ髪を治すもの」ではなく、「今ある髪を扱いやすく、きれいに見せるためのもの」と考えています。
毎日せっせとオイルをつけても、髪がよくならない?
お客様から、こんな相談を受けることがあります。
「毎日ちゃんとオイルをつけているのに、髪がよくならないんです」
そんなとき、私はまず、何のためにオイルを使っているのかをお聞きします。
ツヤを出したいのか、広がりを抑えたいのか。それとも、傷んだ髪を健康に戻したいと思っているのか。
この目的によって、答えは変わります。
私は30年間、多くのお客様の髪を見てきましたが、毎日ヘアオイルをつけることによって髪そのものが健康になった、と実感できる例はありませんでした。
もちろん、これは私の美容師としての経験であって、ヘアオイルを毎日使っている人の髪がきれいではない、という意味ではありません。
オイルには髪の摩擦を減らし、絡まりや切れ毛を防ぐ助けになる働きもあります。
ただ、毎日たくさんつければ、その分だけ髪の状態がよくなるというものではないんです。
これは以前書いた トリートメントを頑張った結果、髪がボロボロに!? という記事にも通じるお話です。
髪をきれいにしたいからといって、何かを足し続けることが正解とは限らないんですよね。
オイルは油。髪に水分を与えるものではない
そもそも、オイルは油です。
「髪に潤いを与える」という言葉を聞くと、髪の内部に水分がたっぷり補給されるようなイメージがありませんか?
でも、油そのものは水分ではありません。
ヘアオイルは、髪の表面をなめらかにしたり、ツヤを出したりする働きが中心です。
また、オイルの種類によっては髪の内部に入り込むものもあり、髪の水分の出入りに影響したり、洗髪時のダメージを軽減したりすることもあります。
ですから、「オイルには髪を保護する働きが一切ない」というわけではありません。
ただし、オイルを塗れば髪の乾燥が完全に防げるわけでも、傷んだ部分が元どおりになるわけでもないんです。
私は、お客様が「髪に潤いを与えたい」とおっしゃるとき、まず何に困っているのかを確認するようにしています。
パサついて見えることが気になるのか、手触りが悪いのか、毛先が引っかかるのか。
原因によって、必要なお手入れは違うからです。
私の美容室にはヘアオイルを置いていません
実は、私の美容室にはヘアオイルを置いていません。
でも、お客様から特に何か言われたこともありません。
そして私自身も、もう何十年もオイルを使っていません。
それでも、私の髪には自然なツヤやまとまりがあります。
もちろん、髪質やカラーの履歴、毎日のお手入れなど、髪の状態にはいろいろな要因があります。
オイルを使わないから髪がきれいになる、ということではありません。
ただ、私にとっては必要のないアイテムなんです。
普段のヘアケアも、シャンプーとトリートメント、ドライヤー前のヘアミストなど、できるだけシンプルにしています。
詳しくは 美容師なのにヘアケアはズボラ!私が髪にいろいろつけない理由 でもお話ししています。
美容師だから高価なヘアケア商品を何種類も使っていると思われることがありますが、実際はその逆なんですよね(笑)。
ヘアオイルを使うなら、毛先に必要な量だけ
では、私はヘアオイルを使わない方がいいと思っているのでしょうか?
そんなことはありません。
毛先のパサつきをツヤっぽく見せたいときや、広がりを抑えてスタイリングしたいときには、便利なアイテムだと思います。
大切なのは、何のために使うのかということ。
例えば、仕上げ用のオイルなら、まずは少量を手のひらに広げて、毛先からなじませてみる。
足りなければ少しずつ足す。
根元や表面につけすぎると、髪質によっては重たく見えたり、ベタついたりすることがあります。
また、洗い流さないトリートメントとして設計されたヘアオイルと、束感や濡れた質感をつくるスタイリング用オイルでは、目的や使い方が異なります。
商品に書かれた使用方法を確認することも大切です。
ヘアオイルは、たくさん使えばいいものではありません。
必要なときに、必要な場所へ、必要な量だけ。
それで十分な場合も多いと思っています。
最後に|ヘアオイルは毎日つけなくてもいい
「ヘアオイルは毎日つけた方がいいですか?」
そう聞かれたら、私は「必ずしも毎日使う必要はありません」と答えます。
オイルを使って髪が扱いやすくなるなら、無理にやめる必要はありません。
でも、何となく髪によさそうだからと毎日せっせとつけているのであれば、一度、その目的を考えてみてほしいんです。
私が美容師として大切にしているのは、髪を何かで覆ってきれいに見せることだけではありません。
今ある髪の状態を知って、必要以上の負担をかけずに扱っていくこと。
ヘアオイルは髪をきれいに見せるための便利な道具。
でも、使い続けるだけで髪そのものが健康になる魔法のアイテムではありません。
毎日のヘアケアは、増やすことより、必要なものを見極めること。
30年間、美容師をしてきた私がたどり着いたのは、そんなシンプルな考え方です。
